ダーヴィド・グロス監督の『0円キッチン』をzoom上でオンライン上映。監督の来日時にインタビューを実現させたIDEAS FOR GOODのライター井上美羽さんをゲストにお招きし、トークセッションやグループダイアログを行いました。
▼主催 GRID CINEMA/ミライプラス
1月16日(土)、zoomにてオンラインイベント【ゲストトーク付き】食糧危機を吹き飛ばすエンタメ・ロードムービー "0円キッチン"上映会&ダイアローグが開催されました。
今回のオンライン上映会のテーマは、「フードロス」
捨てられる食材をレスキューして調理、関わった人と一緒に食べるまでの工程を楽しむダーヴィド・グロス監督の作品を鑑賞しました。zoom上で作品を鑑賞し、食料廃棄問題解決のヒントを得ます。
▼タイムスケジュール
13:30 イントロダクション&チェックイン
13:40 「0円キッチン」オンライン上映
15:15 トークセッション&グループダイアローグ
16:30 終了
13:30 イントロダクション&チェックイン
[映画の紹介]
『0円キッチン』
オーストリア生まれのドキュメンタリー映画監督ダーヴィド・グロス。ゴミ箱で作ったキッチンを車に取り付け、オーストリア、ドイツ、オランダ、ベルギー、そしてフランスへと旅していく。使った廃油は684.5リットル、走行距離は5079km、救出し た食材は690kg。食材を救い出しつつ、それぞれの国で食の問題に取り組む活動家たちと出会いアイデアを学んでいく姿をドキュメントした映画です。
監督:ダーヴィド・グロス、ゲオルグ・ミッシュ
13:40 『0円キッチン』オンライン上映
欧州5カ国を巡ったダーヴィド監督。本記事では、各国で行なっていたことを順番に紹介します。
※ネタバレ注意
オーストリアでは一般家庭を訪問し、冷蔵庫の中を抜き打ちチェック。
ドイツでは農家を訪問し、規格外野菜が売れない実態を知る。
ベルギーでは欧州議会の食堂でゲリラ的に廃棄食材料理を作り議員たちに食料廃棄問題を訴える
オランダでは未来の食として注目される 昆虫で料理を作り小学生たちに食べてもらう
フランスでは1日料理人として漁船に乗り込み捨てられてしまう魚で料理を作る
1. オーストリア🇦🇹
旅の始まりは、ダーヴィトの故郷オーストリアの食堂から始まります。シュニッツェルは、子牛のカツレツのことで、オーストリアの名物料理です。彼はシュニッツェルを調理した廃棄油を食堂から調達し、車の燃料にして出発します。
2.ドイツ🇩🇪
次に向かった先は、ドイツ・ザルツブルグ。一般家庭の冷蔵庫を抜き打ちチェックし、捨てようとしている食材や賞味期限切れの食材を救出。ある家庭では、賞味期限が2003年に切れた調味料も発見!レスキューした食材で料理をして、食材を捨てた住民たちを招いてパーティーを開催。また、ベルリンの郊外では果実採取活動家マグダ・ツァーンと”mundraub”*1というアプリを使って、まちに自生しているプラムなどの果物をハントします。有機農家から規格外の野菜を調達し、規格外野菜を調理する”チョッピングパーティー”で料理に変身させます。
*1 mundraubは環境活動にITをいち早く取り入れたドイツの非営利目的会社です。まちの果樹をオンラインの地図上で「発見」できるサービスは、都市住民を中心に瞬く間に広まり、登録された果樹は5万本を超えます。https://will.reep.jp/mundraub-1/
3.ベルギー🇧🇪
次の舞台はベルギー。欧州議会の食堂でゲリラ的に廃棄食材料理を作り、議員たちに食料廃棄問題を訴えます。毎日
「美味しいという綺麗な言葉で終わり?」と啓発的な質問を職員たちになげかけます。
4.オランダ🇳🇱
4ヶ所目として移動した先は、オランダ。
自動販売機売っているでフリカデル(オランダスタイルのソーセージ)を一口味見するも、倫理的にはこれ以上食べれないというダーヴィト監督。その場をあとにし、レストランVork & MesのシェフであるJonathan Karpathiosのもとへ。Jonathanは庭で、自身のレストランで調理し提供する豚を育てています。「You will not throw anything, you will use everything. Because you know how many time, efforts, and you fun you had with them, the time you think of them(一切無駄にせず、全部使い切る。彼らにかけた時間、努力、そして楽しかったひとときを考えるからね)」
シェフであり活動家でもあるワムカットと有機農家から規格外の野菜を調達し、規格外野菜を調理する”チョッピングパーティー”で料理に変身させます。
またNovel foodとして、世界でも注目を集めている昆虫食にスポットを当てます。乾燥してカラカラになったミルワームを持参し、地元の小学校を訪問。子供たちと昆虫食について学んだあと、ミルワームをクッキーや肉団子の中に混ぜ合わせて調理します。子供たちは、「肉だけよりミルワームの入ってる団子の方が、サクサクしていて美味しい」と笑顔で料理を食べます。
5.フランス🇫🇷
旅の最後の舞台はフランス。
フランス・ブルターニュのギルヴィネック港を訪れ、小型船にキッチンをのせてもらい、地元の漁師たちとともにでエビ漁にでます。小さくて売り物にならないエビや小魚を拾い集め、その場でブイヤベースを作りました。スープじゃ腹はふくれない、と半信半疑でスープを食べる漁師たちは、「なかなかの出来だ」と完食。小型船で一回漁をするだけでも小さな魚がとれてしまい、港まで持って帰るのも負担になるため、ほとんどを海に捨てるそう。「これはフランスの田舎町だけでなく全世界で毎日起きていることだ」と話します。
15:15 トークセッション&グループダイアローグ
▼トークゲスト
井上美羽(いのうえみう)さん
IDEAS FOR GOODライター
「ゴミ袋から胃袋へ」をキーワードにフードロスや環境問題に向き合い、IDEAS FOR GOODライターとして国内外のサステナブルなアイディア、企業や団体の取り組みを発信する。昨年12月、『0円キッチン』の監督、ダーヴィド・グロス氏が来日した際に取材を行い、彼のフードロスに対する想いを記事にした。記事はこちら▼
浦野真理(うらのまこと)さん
URL(ユニバーサルリサーチラボ)代表 / GRiD CINEMAオーガナイザー
AI開発ベンチャー企業で研究職に従事しつつ、その傍ら2016年にURL(ユニバーサルリサーチラボ)を立ち上げる。環境問題、ポスト資本主義、北欧の社会などをテーマとした読書会やワークショップ、ドキュメンタリー自主上映会「URLシネマ」等を主催。本を読まずに参加できる読書会「Booked」運営メンバー。世界スケール、未来志向の「対話の場」をつくり続けている。
▼ファシリテーター
小林誠司(こばやしせいじ)さん
ミライプラス代表
ソニー株式会社に新卒入社。画像処理などの技術開発に従事。社内MVP受賞。世界初4K外科内視鏡などの製品化に技術開発シニアマネジャーとして貢献。その後、人事にて人材開発、キャリア支援を通じ社員の学びに携わる。2019年末に退職して独立。子どもたちが好奇心を持ち、自ら学び、考え、チャレンジする世界を作ることを目指し、ミライプラスを設立。キャリア教育コーディネーター。ビガーゲーム認定トレーナー。OS21トレーナー。
ゲストスピーカーは、2019年12月に『もったいないキッチン』の公開に伴いダーヴィド監督来日時に取材した、「IDEAS FOR GOOD」のライター井上美羽さんと、URL代表の浦野真理さん。ファシリテーターはミライプラス代表の小林誠司さんが務め、今回上映した作品や監督について、また、日本と海外のフードロスの現状について話しました。
以下、トークセッションのFAQです。
Q&A
モデレーター小林さん:「もったいないキッチンのインタビュー記事を書かれているので、今回が0円キッチンを見るのは初めてだそうですが、どうでしたか?」
井上さん:「日本とヨーロッパとの価値観の違いを感じました。作中でゴミ箱にダイブするシーンがありますが、日本人だったらわき目もふらず出来るのだろうかと考えましたね」
小林さん:「浦野さん、今のお話を伺ってなにかありますでしょうか?」
浦野さん:「ダーヴィト監督は、明るく映画づくりや情報発信をしている方だという印象を受けましたが、実際お会いしてみて井上さんはどんな印象を受けましたか?」
井上さん:「おっしゃる通りで、常にスマイリーなのが印象的な方です。楽しく問題解決をしていこうという姿勢が強い方だと感じました」
浦野さん:「明るいけれども、確信をついていくというか、割とズバズバ言うんだなともおもいましたが(笑)」
井上さん:「敵を作るわけではなく、一緒にに頑張れる仲間をつくっていきたいそうなんです。コンビニのフードロスの例を1つとっても、コンビニだけが悪いわけでなくて、フードロスを生み出す社会のあり方自体に問題があると考える方でした」
小林さん:「フランスで漁業をしている方とのダイアローグでも、最初意見の食い違いがあっても最終的には一緒に頑張りましょうってなってましたよね」
井上さん:「うんうん」
小林さん:「日本のお話がでましたが、日本でのフードロス対策の取り組みの例をお話していただいてもよろしいでしょうか?」
井上さん:「1/3ルールという法律があります。製造から販売までの過程が三分割されていて、賞味期限の1/3で、メーカーがスーパーに納品できなくなり、捨てられてしまいます。イギリスは1/2だったりで、日本よりも柔軟なルールになっているんですよね。ここの部分は日本の法律を見直すべきだと思います」
浦野さん:「例えば、賞味期限6ヶ月の食品を日本で作るとしたら、メーカーは2ヶ月超えたらスーパーに納品できないし、スーパーも次の2ヶ月間を超えたら捨てるか安売りショップに流すかということですよね。ということは実質賞味期限の2/3の期間しか商品として売れなくなるということですよね」
井上さん:「そうですね。店頭に置けなくなる期限が2/3ですね。でも、賞味期限の日にちまで書かないようになったり、日本でも賞味期限に関してはすこしずつ変化してきていると思います」
小林さん:「映画の中で、EU議会食堂でのシーンがありましたが、レストランでのフードロス対策のお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
井上さん:「私自身日本サステナブルレストラン協会に入っていて、レストランでのサステナビリティを推進していく活動をしています。いろんなシェフとお話をしていく中で、レストラン業界でもフードロスにたいしての関心もかなり高まってきているという印象です。ダーヴィト監督もインタビューのなかでもおっしゃってたんですけど、料理ってフードロス対策の一番簡単な解決策で、誰でもできることなんですね。料理のクリエイティビティとかどうやってその食材を使えばいいのかはシェフたちが一番よく知っています。例えば、大根や人参の皮はご家庭だと捨てられてしまうことが大半ですが、あるシェフはそれを乾燥させてパウダーにして料理にかけたり、ベジブロス(野菜からとれる出汁)にしてスープにするだとか。そういったことを高級なレストランほど当たり前のようにやっているなという印象があります」
小林さん:「その協会がサステナブルな取り組みを推進して、いろんなレストランがその協会に参加しているということでしょうか?」
井上さん:「現在は19店舗のレストランさんが加盟していらっしゃいますね。もともとは2010年に立ち上がったイギリス発祥の協会で、10カテゴリーのサステナビリティのレーティング指標があって、点数をつけて格付けをして星をつけていく。ミシュランのサステナブルバージョンといったらわかりやすいかもしれません。フードロスの削減の指標になっていて、そこも意識して推進しています。もっと広まって、加盟店が増えたらいいと思います」
小林さん:「協会外のレストランの活動はどうなんでしょうか?」
井上さん「全国のサステナブルレストランの店舗数はすこしずつ増えてきていて、関心度も高まってきていると思います」
浦野さん:「みなさんにオススメしたい本があるんですけど。*1パン屋さんを例に挙げると、広島市の『すてないパン屋』のお話をしたいです。創業70年の3代目になる跡取りが過酷な仕事を受け継ぎました。彼はパン作りの修行でオーストリアに行ったそうなんです。オーストリアのパン職人って、午前中で仕事を終えるんですって!午後は美術館いったり遊んだりしているそうなんです。ダーヴィト監督もオーストリア出身ですね。オーストリアのパン屋さんはその日作った分を売り切ったらお店を閉める。そもそも売り切れない分を作らないのだそうです。パン屋だけでなく、他のサービス業も「お客様のためにオーバーに働く」というカルチャーがもともとなくて。『すてないパン屋』の店長さんは、日本は経済的には先進国だけども文化的にはそんなに進んでない、と感じたそうなんですよ」
浦野さん:「井上さんは日本のパン屋さんでアルバイト経験があったり、オランダに一年行かれていたということで、日本の経済が必要以上だと感じた経験もあるのではと思うのですが、どうでしょうか?」
井上さん:「私が働いていたパン屋さんでは、焦げているパンはお客さんに提供しません。これは日本の考えを象徴しているなと感じました。自分たちが提供できる範囲で一番パーフェクトな状態でしかお店に出さない。お客さんがどう感じるかのその先まで考えて、少しでも失礼に値することは絶対しない。これはいわゆる「お客様第一」という考えではないでしょうか。でもこれがフードロスの要因にもなっているんですよね。一方海外では、変なかたちの野菜も当たり前に売ってました」
小林さん:「日本は過剰な面がありますよね。娘のフランスに留学時に、日本からのお土産でお菓子を持っていったことがあったのですが、フランスのお菓子と比べたときに過包装だと思いました」
井上さん:「ダーヴィト監督も同じことをおっしゃってたんです。ある日、監督がコンビニでお蕎麦を買ったんです。レジ袋に入ったお蕎麦買うときに、『プラスティックとお蕎麦、僕はどちらを買っているのかわからない』と(笑)」
小林さん:「場所にもよるけれど、フランスではマーケットやスーパーではビニール袋に入れて持ち帰ることが当たり前ではないし」
浦野さん:「形のいい果物を選んだり、賞味期限が長いものを棚の奥から選んだり、僕もよくやってしまいます。こういうのもロスを助長しているのだと気付かされます」
浦野さん:「井上さんの記事でお好み焼きが出てきたのを見かけたんですけど、監督の次作『もったいないキッチン』に実際に出てくるんですか?」
井上さん:「そうなんです。監督は、日本の「もったいない」という言葉をリスペクトしていて。『もったいないキッチン』の作中では、お好み焼きに対して好印象だったそうです。打たれたイノシシや、形の悪い野菜は切ってしまえばわからないからいい料理だ、とお褒めのことばを頂きました」
小林さん:「IDEAS FOR GOODの記事の中で、日本で食べられるのに捨てられている食料は年間約600万トンであり、FAOによると世界全体では13億トンにものぼるとあります。日本のフードロス量は世界的にみたら実際どうなんでしょうか?」
井上さん:「フードロスが多い国と言われているんですが、世界と比較すると平均か、それよりもちょっと少ないくらいです。消費者庁の出してる数字で、日本は年間一人当たり133.6キロ。アメリカは177.5キロ。ドイツは136キロ。先進国の中で比べると少ない印象を受けますが、他の国と比べるとやはり多いことに変わりません。フードロスにもたくさんの種類があって、サプライチェーンが長いほどロスが発生しやすくなります。これは、発展した国の生活様式で生産地から離れれば離れるほど、ロスが多くなるとも言えますね」
小林さん:「地産地消のほうがロスは減ると言うと言うことですね」
井上さん:「最近だと”産直”といって、コロナ禍なのでECで直接生産者さんから買うというのも広まってきていますが、これもフードロスの対策にもなるのかなと」
小林さん:「コロナといいますと、飲食店が大打撃をうけていて、
行き場のない在庫の食品のロスも増えているとニュースになっていますが、このコロナの状況に対してご意見ありますでしょうか?」
井上さん「魚養殖家さんとお話しする機会がありました。レストランに卸していたので、6割減ってしまい、4割しか卸せていないそうなんです。魚はコロナに振り回されずにどんどん育っていくけれども、需要が激減したので行き場がなくなってしまっています。そこで何ができるかというと、個人が生産者から直接買うこと。しかしデメリットもあって、個人には一度にたくさん買ってもらえないないし、要望も多くなるので、生産者の負担が増えます。そこで、福袋じゃないですけど、形などが多少違うものも含まれたボックスで販売するなどもいい策なのではないでしょうか。なので個人で生産者の負担を減らせることとしては、料理のレパートリーを増やして食材を使いこなせるようにすることや、要望少なめで生産者から直接食材を購入することが挙げられます」
小林さん:「浦野さん、作中で気になったシーンはありましたか?」
浦野さん:「未来の消費者である子供たちが昆虫を食べていたシーンですね。「虫っぽくない味だ!」と言っているシーンでは、虫の味知ってるの?食べたことあるんだ。。という感じでした笑) 昆虫食というのはフードロス解決のキーなのでしょうか?」
井上さん「昆虫食は、フードロス解決だけでなく、環境問題の対策にもつながります。ダーヴィドさんはベジタリアンだけれど、昆虫食は温暖化の緩和にもつながると考えた上での昆虫食をピックアップしたのだと考えます」
小林さん:「昆虫食については、『もったいないキッチン』の方にも出てきますよね」
井上さん:「日本でも注目されている、『地球少年』がラーメン店『凪』とコラボした、コオロギラーメンというのもあるんですよ」
小林さん:「昆虫ラーメン、いいですね」
浦野さん:「日本ではイナゴを食べますし、フランスならエスカルゴを食べる習慣がありますよね。最近買った本に、『ざざ虫』というのがありまして、以前長野県を訪れた際にスーパーで瓶詰めにされて売られているのを思い出しました。姿がそのままの状態で大容量だったので、買えずに帰ってきたのですが(笑) 映画の中でも、パウダーにしたりマッシュしたりと、昆虫の形を変えて調理していましたよね」
井上さん:「意識の違いがあるのだと思います。エビは食べますしね」
浦野さん:「そうですね、桜エビとミルワームもあまり違いはないような気がします」
小林さん:「小さい頃から当たり前に食べていたら違和感はないですもんね」
井上さん:「昆虫はタンパク質がすごく豊富で、栄養価が高い食べ物なんですよね!」
浦野さん:「オランダの小学生も、そのことをすでに知っていましたよね。鉄分も豚肉の10倍くらい含まれているようです」
井上さん:「愛媛県に昆虫カクテルを提供しているバーもあるんです」
浦野さん:「まだまだグロテスクと捉えられている昆虫食に対して、大きなポテンシャルを感じます」
参加者:「井上さんへご質問です。今の日本でフードロスのない社会をつくるためには、レストラン・企業・政府・消費者どのセクターが先導してメッセージを発信していくことが特に重要だと思われますでしょうか?」
井上さん:「消費者の視点がいちばん大事だと感じます。『形がすこし崩れていても買うよ!』という声があることでお店も提供する商品の幅が広くなるのではないでしょうか。でも意識というものはゆっくりと変化していくもの。だから、すぐに試行錯誤できるレストランの力が大きいのです。どう生産され、調理し、消費者に届けるかを考えて行動できるレストランは強いなと思いますね。生産者と消費者との重要なハブだと思います」
参加者:「ダーヴィド監督は、どんなきっかけから、フードレスキュー活動を始めたのでしょうか?」
浦野さん:「とある取材記事によると、アメリカのゴミをリサイクルする映画『freegan』を観て影響を受けたそうです。映画の余韻がある中で、祖国オーストリア・ザルツブルグのスーパーのゴミ捨て場をみたときに「これはひどい」と感じ、ゴミ箱から拾って調理して、YOUTUBEでその様子の動画をアップしたら全世界から反響を受けたのが始まりのようです」
参加者:「社会的な問題をユーモア交えて自分流で紹介する。マイケルムーア監督みたいだなとおもいました(笑)」
浦野さん:「そうですね。人を怒らせないマイケルムーア監督みたいとも言えるかもしれません(笑)」
小林さん:「この先、彼が何をやっていきたいのかをご存知ですか?」
井上さん:「彼は日本の方と結婚されていたり、日本への関心がとても高い方です。日本での体験が『もったいないキッチン』の製作にもつながっているようですので、どんどん日本に造詣が深くなっているのではないでしょうか」
浦野さん:「ダーヴィド監督とのインタビュー記事では、日本には「もったいない」という精神と、アメリカに影響された「大量消費」という矛盾する2つの文化が混在していて、それを不思議に思い『もったいないキッチン』を作成した、という記述が心に残っています」
井上さん:「日本人にはもったいない精神があって、精進料理があって、物を大事にする文化があるのに、なんでこんなに日本のフードロスは多いのか?と疑問があったそうです。考えていく中で、システム自体が問題なのではないかと考えるようになったそうです。(ダーヴィド監督来日時、井上さんによるインタビュー記事よりhttps://ideasforgood.jp/2020/01/08/mottainai-kitchen/)」
浦野さん:「客観的で、とても貴重なコメントですよね」
小林さん:「さいごに、井上さんはパン屋でのバイト中にフードロスについて関心が高まったとおっしゃっていましたが、これからフードロス解決に関わっていくなかでこれからやっていきたいこと、参加者のみなさんに伝えたいメッセージがありましたらお願いします!」
井上さん:「今回イベントに参加された方は関心が高い方が多い印象ですので、これからは発信する側になるのかなと思うのですが、フードロスについてアンテナがない方にお話する際に、否定されたりすることもあるかと思います。そんな時は、ダーヴィド監督が作中でゴミ箱にダイブしたり、相手と意見が食い違った時に自分を恥ずかしいと感じたりせず、堂々とした態度をとっていたことを思い出して頂いて、自分の意思を曲げない姿勢を取り続けたらやがて大きなムーブメントになるではと思います。みんなで発信し続けていきましょう!」
16:00~ グループダイアログ
映画・トークから気づきを得たことを4人1組でディスカッションしました。
ブレイクアウトルームで話したこと
渡邊のグループ
浦野さん「僕はやっぱり、昆虫食に興味が湧きました」
参加者「無駄がないようにつくるけど間に合わない、みたいなこともあるけど、呼びかければくるというところが印象に残りましたね」
「道ゆく人に「残り物でできた料理を食べにきて!」と声をかけ続けるダーヴィド監督の姿勢を見習いたい」
「この映画は、京都でカフェを経営していて、地元の生産者ともつながりがある友達が勧めてくれました。ゴミ箱へダイブするシーンは衝撃的でした。まだまだ食べられる食品が捨てられたゴミ箱は、日本各地にたくさんありそうですよね」
「”たのしくなければ”はとてもキーワードだとおもいます。最近長野県に引っ越してきて、農家でアルバイトをしている友達が多いのですが、余った野菜をどう料理するかをシェアしたり、大人が楽しそうに生活する姿も子供達の目に映るので、大切だと思いました」
「ダーヴィド監督はベジタリアンなのに豚の解体のシーンを撮影し、肉を裁く人への敬意を示すなど、誇りと問題を解決したい気持ちを持ってドキュメンタリーを作っておられるのだと感じました」
瀬沢さんのグループ
瀬沢さん「僕はデンマークに留学していたとき、学校帰りにゴミ箱を漁りに行ったことをみなさんにお話しました。デンマークだと、鍵がついていないゴミ箱はサルベージしてもいいという法律があるので、周りからの目をあまり気にしない若者たちはよくゴミ箱を漁るそうなんです。フレッシュなハムや果物がたくさん見つかりましたよ。消費者も、やむなくフードロスを出してしまっている面もあると思うので、一消費者としてできることとして『TABETE』などのアプリを使ったりすることもできると思いました」
ブレイクアウトルームのまとめをしたところで、参加者から質問がありました!
参加者「フードロスを都市型で解決していくべきなのか、地方の循環型社会のかたちで解決していくのがよいのか、どう考えますか?」
井上さん「私自身、現在は埼玉に住んでおります。以前、ご縁があって愛媛県松野町を訪れました。そこでは地域の人同士の繋がりがとても強くて、物々交換が行われているのも頻繁に見かけました。でも、いろんな方からお話を聞く中で、その町に限られたことではないと感じています。徳島県上勝町とかもそうですね。お金が全てのツールでなくても生きていけるモデルもあるので、そういったことも東京などの都市部で広まっていったらと思います」
小林さん「都市部だと、マンションの隣人と話すことも珍しいですもんね」
浦野さん「井上さんは、ライターとして文章を書いたり発信するときに、攻撃的な書き方をしないとか、ポジティブに発信するとかってことなど気をつけていらっしゃるんですか?」
井上さん「そうですね。誰かを傷つけたり、否定しない書き方を常に心がけています」
16:30 イベント終了
環境問題についてアンテナが高く、ダーヴィド監督への取材も実現させた井上美羽さんをゲストスピーカーとしてお迎えしました。トークセッションでは、ゲストスピーカーだけでなく、参加者からも質問や意見が飛び交った、活発なイベントでした。
”Waste food is ready!”
▼主催 GRID CINEMA/ミライプラス
ミライプラス
ミライはどんな世界でしょうか?
AIやロボットによって本当に仕事が奪われてしまうのでしょうか?
アトムやドラえもんで見たミライはワクワクしませんでしたか?
そんな楽しい未来、明るい未来を創るのは子どもたち。子どもたちが好奇心を持ち、自ら学び、考え、そしてチャレンジする世界を作る、それが私の願いです。ミライに輝きをプラス!
GRID CINEMA
<カジュアルスタイルの映画イベント>
NagatachoGRIDでは映画イベントを自主開催、サポート開催します。
せっかく映画を観るのであれば今までとは違う視点で鑑賞するというのはどうでしょうか?
テーマを深掘りするゲストをお呼びしてトークを交えた交流会も同時開催。ちょっと新鮮な価値観に触れ、その場で語り合う仲間に出逢う場。
レポーター:GRID Cinema crew
都留文科大学3年 渡邊麗桜奈
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